つぶやきジローの隠れ部屋


形成外科でよく診る疾患は「ケガ」「ヤケド」です。

形成外科医になって早や〇十数年、今まで受診された方のなかにはイロイロなツワモノがおられました。

器械で挟んだ手のケガで、出血が多かったからチャンと自分で応急手当をしてきたと自慢気なオジサン、恐る恐る包帯とガーゼを外してみると・・・茶色一色。



よくよく見ると、タバコの葉っぱだらけでした。本人いわく「だってタバコの葉は血を止めるって聞いたから・・・」と。麻酔するにもタバコの葉に隠れて見えず、ぎゃあぎゃあ騒ぐ中、じゃぶじゃぶと洗ってから処置を始めることになりました。

「ゆうべ熱湯をこぼしてヤケドしたからアロエを使いました」とニコニコしているおばあちゃん。どこですかーと尋ねると、差し出した脚に緑の物体が・・・ヤケドして水ぶくれになっている上に、庭に生えていたアロエの葉をちぎって直接貼り付けていました。



うん、確かに冷たいから少しは冷却効果があったのか、なんて感心している場合じゃなく、水疱が葉っぱのトゲトゲで破け赤く腫れてきている最中でした。せめて皮をむいて貼ったら良かったかなあとおっしゃるので、そうかもねって半笑いでした。

皆さんは、どちらも真似しないでくださいね( ˘•ω•˘ )

ということで、今回のお話はケガ・ヤケドの応急処置について。

まずはケガをした時

キズに付着する土や泥は、化膿や、色が残ることでイレズミのようになったりする原因になります。できるだけケガした直後に水道水などの流水で土や泥は洗い流しましょう。



よく、水道水でバイ菌が入るんではないかと心配している方がいらっしゃいますが、日本の水道水は非常に優秀 ( ^ω^ ) 心配せずに十分に洗いましょうね~

洗ったあとは絆創膏(できれば傷口に貼りつかないタイプ)やきれいなガーゼ(布のハンカチなどでも可)で傷を保護しながら病院を受診しましょう。すぐに病院を受診できる場合は、消毒や塗り薬などは不要です。ティッシュペーパーや綿花はキズに張り付きますので傷口に直接は当てないでください。

すぐに受診できない場合は、キズが乾燥しないように薬局にある軟膏などのキズ薬(またはワセリンなど)をつけ保護してください。キズは乾燥すると深くなったり化膿したりすることがあります。

キ〇パ〇ー〇ッドは、うまく使えばキズを早く治す優れものです。
一方で、使い方を間違えると・・・
貼って3日目ころに、キズが化膿した~~(または痛くなった)と言って受診される方が非常に多いので使用するときは気を付けてくださいね(◎_◎;) 
異物が残っていたり十分にきれいにできていない場合は感染が起きやすく、また出血や浸出液が多い場合に使用すると、病変全体がふやけてかえって治りを悪くしたりすることがありますので使い方に十分な注意が必要です。

出血が多い時には傷口付近に布を厚く当てて直接圧迫して下さい。指や腕や足のケガの時に細いゴムやヒモなどで傷の根元をきつく縛らないでください。中途半端な締め方ではうっ血の状態になりかえって出血が多くなり、きつく縛ったまま長時間置いておくと組織の壊死や神経の麻痺がおこることがあります。
縛る際には幅のあるバンドや専門的な知識が必要です。抑えても止まらない大出血の場合は迷わず救急車を呼びましょう!



次にヤケドの応急処置。

ヤケドをした時は、流水や氷水などで直ぐに冷やしましょう。軽い場合(水ぶくれがないか小さい場合)はジンジンする感じがなくなるまで十分に冷やしましょう。
冷やしたあとに水ぶくれができなければ、ワセリンまたはハンドクリームなどの保湿剤で十分に保湿すれば問題なく落ち着きます(日焼けした後のように、後日少し皮がむけるかもしれません)。

水ぶくれができた場合は、なるべく水ぶくれを潰さないように(お子さんのヤケドの時、着衣部の場合は無理に衣服を脱がさず場合によっては衣服をハサミで切って脱がしてください)可能な限りヤケド部を冷やしながら病院を受診してください。水ぶくれが破れた場合はきれいなラップなどをあててその上から冷やしてください。

ここで冷やすときの注意!!( ..)φメモメモ

その1!

氷を直接当てると凍傷になることがあります。水または氷水で冷やしたタオルや、氷・保冷剤を使用する場合はタオルなどにまいて間接的に冷やしましょう。水だけでも十分に冷やす効果はあります。



その2!!

小さいお子さんやお年寄りは低体温になることがありますので、ヤケドで冷やす部分以外は体温が保たれるようにしましょう。
冷やすときに濡れた衣服は着替えさせるか、脱がせた後に乾いたタオルや毛布などで体を覆ってあげましょう。

ヤケドの面積を測るときに、おおざっぱですが、ヤケドした人の手の平1枚の大きさで対表面積の1%と数える簡便法があります(小児の場合は手の大きさや頭と四肢・体の比率が成人と大きく違うので本当にとりあえずの目安ですが・・)。
ヤケドした部分が手のひら15枚分(小児なら10枚分)を超えると、ヤケドによる脱水が進みショックを起こす可能性がありますので、直ちに救急車を呼び対応ができる病院に搬送してもらいましょう。*目安の広さより範囲が狭い場合でも、現在かかっている病気によってはショックを起こしやすいことがあります。排尿が極端に少ない場合は注意してください。

よく受診された方から言われること、「こんな傷で病院に来ても良かったのかな~??」

軽く見える「ケガ」や「ヤケド」、初期治療を間違えるとどんどん深くなり治りにくくなることがあります。迷うくらいなら、病院で相談してみましょう( ^ω^ )


最初はまじめにやりますよ~~^^

形成外科って初めて聞いた方もいらっしゃると思いますが、実は日本で誕生してから既に60年以上の歴史があります。正式には plastic and reconstructive surgery :形成再建外科とも呼ばれ、体表面の異常・欠損などをなるべく元の状態に回復させるための診療科です。

世界でも形成外科が専門分野として独立したのは近年ですが、形成手術そのものの歴史は古く、紀元前3000~2500年ころの古代エジプトのパピルスの記録に鼻のケガの治療法、紀元前1500年ころの記録には組織移植の記載があるのです。



また古代インドの罪人の「鼻そぎ刑」(゚Д゚;) への再建手術も発達したと紀元前600年ころの記録にあります。

どうしてこんなにも世の中へ「形成外科」が浸透していかないか。その理由は・・・

ここからは日本形成外科学会のホームページ(http://www.jsprs.or.jp/general/)に記載してあることの抜粋です。

「形成外科」とは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、みなさまの生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献する、外科系の専門領域

<取り扱う疾患>

  1. 新鮮外傷・新鮮熱傷
  2. 顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷
  3. 唇裂・口蓋裂
  4. 手足の先天異常(多指・少指・合指など)・外傷
  5. その他の先天異常(副耳や小耳症などの耳介異常・先天性眼瞼下垂症・臍ヘルニアや臍突出症・漏斗胸など)
  6. 母斑・血管腫・良性腫瘍
  7. 悪性腫瘍およびそれに関連する再建
  8. 瘢痕・瘢痕拘縮・肥厚性瘢痕・ケロイド
  9. 褥瘡・難治性潰瘍
  10. 美容外科
  11. その他(爪や毛などの疾患・リンパ浮腫・顔面神経麻痺・腋臭症など)

~日本形成外科学会ホームページより抜粋~



わかりにくいでしょう??( ˘•ω•˘ )??

正直いって形成外科医ではない医療者の間でも十分な理解が得られていないというのが実情です・・・

そこで私なりに次のようにまとめてみました。

形成外科は、体の場所(部位や臓器)別の診療科ではないため、どのような診療科であるかを説明するのが難しい分野です。特に整形外科と美容外科(美容整形・美容形成)と何が違うの?と思っている方が多いのではないでしょうか。

本来は単純に分類することは難しいのですが、あえて大ざっぱに説明すると、「整形外科」は主に怪我や病気で失ったり損なわれた身体の機能や運動能力を、なるべく正常の状態に回復させる治療を行う診療科、「形成外科」は主に怪我や病気で生じた体表面の異常を、なるべく正常の状態に回復または再建する治療を行う診療科、「美容外科」は異常ではない正常な外観を、審美的に更に改善させるため手術や手技を施す診療科となります。

例えば・・・事故にあった車の、足回りやボディの修理を「整形外科」が担当、内装や塗装を「形成外科」が担当、事故で壊れる前の整備・点検・ドレスアップを「美容外科」が担当するようなイメージでしょうか^^

誤解を招く要因としては、それぞれの分野が扱う部位や治療法が部分的に重複していることや、単純に語感が似ていることから生じていると思われます。

形成外科は体表面の異常を扱うために、病気そのものの治療により「見た目」を改善させ、日常生活における精神的な負担を大きく軽減することが可能です。

そういう意味では、正常ではあるけれど本人にとってはストレスに感じる部分を改善することが可能な美容外科と似ていると言えます。事実、形成外科で扱う分野の1つが「美容外科」です。しかしながら「美容外科」は怪我や病気を治すことが目的ではないため、健康保険が適用されずに全て自費診療となり、形成外科の一分野としてよりは、独立した分野として考えた方が理解しやすいかもしれません。

実際に当院で行っている形成外科の保険診療は、体表の外傷(けが)や熱傷(やけど)、褥瘡(床ずれ)や皮膚潰瘍(治りにくい傷)、皮膚・皮下の腫瘍(できもの)、顔の怪我(鼻骨骨折など含む)や副耳(ふくじ)・耳廔孔(じろうこう)などの先天異常、加齢性の眼瞼下垂(皮膚の垂れ下がりによる見えにくさ)や陥入爪(まき爪含む)などの治療、ざ瘡(ニキビ)やざ瘡後の萎縮性瘢痕(凸凹になったニキビ痕)の治療を行います。

他に、外傷や癌などの手術後の瘢痕(目立つ傷あとや引きつり)やケロイド・変形に対する機能や形態の再建(修正)などの治療も行います。

また自費診療として、レーザー機器やイオン導入器・化粧品などによる「あざ」「しみ・しわ」「肌あれ」「ニキビ」「ニキビ痕」の改善や、レーザー脱毛、男性の薄毛治療などの他にプラセンタやにんにく注射も取り扱っています。

患者さんのQOL(Quality of Life)の向上のために、「目立ちにくい傷あと」「異常な状態の回復・再建」を柱として、さらには無理やりな若返りではなく「今より上の美しさ」をめざした診療を行っています。



・・・・結局範囲が広くて色んな領域を扱っているからワカリニクイという結論でいかかでしょうか??(◎_◎;)